例外的格標示構文の名詞化と受動名詞句について
西前明
英語のいわゆる例外的格標示(ECM)構文は名詞化できないことがよく知られている。(a)*their recognition of her to be their representative及び(b)*her recognition to be their representativeのような例についてはこれまでに様々な分析がなされてきたが、(c)their recognition of her as their representative及び(d)*her recognition as their representative のような例の文法性はあまり注目されてこなかったように思う。本発表ではChomsky (2008)の枠内でCPとの構造的平行性を保つようなDPの構造を提案し、それによってECM構文の名詞化の逸脱性を説明する。(a)対(c)の対立は、主語に関する述語の一般的範疇選択特性の問題としてとらえ、(b)・(d)の非文法性については、ECM名詞の語彙的特性(n*/nとの共起可能性)に還元する。さらに派生名詞の語彙的特性の問題として、*the dinner's enjoyment (by John)及び*John's murder of Jackのような例を取り上げる。