日本語の語彙的複合動詞における意味的制約について
淺尾 仁彦（京都大学大学院）
語彙概念構造(LCS)に基づいて日本語の語彙的複合動詞を分析し，複合動詞の形成が可能な動詞の組み合わせと，形成された複合動詞のもつ項構造について説明することを試みた。
先行研究では，複合動詞に対して単純動詞と異なる形式のLCSが与えられてきた。本発表では，複合動詞も単純動詞と同じ意味的制約に従うという観察に基づき，両者に同一の構造のLCSを与えた。そのうえで，元になる二つの動詞のLCSから，一定の規則（重ね合わせ規則）に基づいて複合動詞のLCSが得られると考えることで，複合動詞の振る舞いが簡潔に説明できることを示した。
また，これに線形順序に関する類像性(temporal iconicity)および主語一致の条件を加えることで，複合動詞の形成が可能な動詞の組み合わせについて正しく予測できることを論じた。
