等位接続構文の逆スコープ解釈
戸次 大介 (東京大学21世紀COE特任研究員)
(1)三人の審査員が、[芥川賞と直木賞に][(新人の)田中氏と(ベテランの)山田氏を]推薦した。
(1)の文には、「芥川賞と直木賞に」と「田中氏と山田氏を」の関係を並行的に解釈しながらも、それらが「三人以上の審査員」より広いスコープを取り、分散的である逆スコープ解釈が存在する。しかし、この解釈の存在は、May (1985)の量化子繰り上げ分析や、Hayashishita (2003)のMINOR分析を含む、現存するほとんどの理論にとって解決しがたい問題である。
本研究では、戸次・川添(2005)で提示された並行的解釈の分析が、等位接続項の順逆スコープ解釈についても統一的に導出し、(1)のような並行的解釈とのインタラクションについても自然に解決することを示す。
また、等位接続項の逆スコープ解釈においては、その他の項とは異なり、Hayashishita (2003)の凍結効果が見られないことにも言及する。