チャック語とマルマ語の声調対応について
藤原 敬介 (京都大学大学院)
チャック語は約2000人の母語話者をもつ、チベット・ビルマ語派・ルイ語群の言語である。マルマ語は約20万人の母語話者をもつ、チベット・ビルマ語派・ビルマ語群の言語である。いずれもバングラデシュ人民共和国・チッタゴン丘陵を中心にはなされている。
本発表では、チャック語とマルマ語にみられる同源形式の語彙について、声調の対応関係を記述した。その結果、対応するマルマ語でたかい声調であるものは、チャック語固有語形式ではひくい声調であらわれ、逆にマルマ語でひくい声調であるものは、たかい声調であらわれる傾向にあることがわかった。この通則にあわないものは、借用語である可能性がたかい。借用語とはいえない例も存在するけれども、そのような場合は接頭辞をもつことがおおい。接頭辞の影響で声調が変化している可能性がある。