満洲語文献における語末の K と子音連続の前子音 K についての一報告
-「満文金瓶梅」を中心に-
結城 佐織 (東京外国語大学大学院)
満洲文字の軟口蓋子音文字 k と口蓋垂子音文字 q は,語中の子音文字連続 (VC1C2V の C1) と,語末 (VC#) に立つ。しかしこの文字 k, q(Kで代表させる)と他の文字との連結については明白でない。本発表では子音文字 K の前の母音に注目し,「満文金瓶梅」においては,次のような傾向があることを示した。
a. VKCV, VK# の K の前の V が e → VkCV, Vk#
b. VKCV, VK# の K の前の V が e 以外 (a, i, o, u) → VqCV, Vq#
発表では『清文啓蒙』との比較も行い,第六字頭という観点でも説明できない点にも注目した。更にこの傾向から外れるのは,主にV1CCV2の V1が u 或いは ū の単語であることを述べ,その原因として,音韻変化の形跡,借用語の可能性,接辞 -ha, -xun の接続が考えられることを示した。