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大墩保安語の数詞「一」に由来するgəについて

佐藤 暢治 (広島大学)

 本発表では,中国甘粛省で話されているモンゴル系言語,大墩保安語の数詞「一」に由来する gəに焦点をあて,先行研究と資料について述べたあと,発表者が採集してきた資料にしたがいgəの位置,gəの機能,談話から見たgəを考察した。

 現時点で明らかになったことは,次のとおりである。(1) 大墩保安語のgəは,先行研究が述べるような単数接尾辞ではない。主格形かゼロ対格形(主語名詞か目的語名詞)に後置する付属語であり,その機能は前置名詞を取り立て,それだけを排他的に主張することにある。(2) 大墩保安語のgəは,談話から見ると,話題に関わるものとして, 1. 冒頭で全体の中心話題あるいはその関連話題を導入する, 2. 途中で全体の話題とは直接関わりがない話題へと一時的に転換する, 3. 地の文から会話文へと転換した新たな場面の中に話題を導入する, 4. 全体あるいは一場面を統括する,といった場合に用いられる。

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