諸県 方言における「一型アクセント」の実現について
-フォーカスとの関わりに注目して-
佐藤 久美子 (九州大学大学院)
諸県方言は、「尾高一型アクセント」を持つ方言である。諸県方言におけるアクセントの実現に関して、これまでの研究では、一般に「文節の最終音節が高くなる」と記述されている。しかし、このような記述では、一見同じように見える文でも文脈によってピッチ形が異なるという事実が捉えられない。
本発表では、高いピッチが実現するのは文節ではなく音韻句であるということを主張し、音韻句の形成について考察する。従来より、音韻句の形成には、フォーカスと統語構造が関わっていると考えられている。諸県方言においても、それを示す現象が観察される。そこで、当方言の音韻句形成規則として、フォーカスと語彙範疇に言及する規則を提案する。そして、フォーカスに言及する規則が適用されることで、文脈によってピッチ形が異なるという事実が説明できることを示す。