「テモラウ」構文における「ニ-ガ」交替と構文拡張
澤田 淳 (京都大学大学院)
本発表では、「テモラウ」が新たな構文を形成している事実を示し、日常言語の動的な変化と創造性の一側面について論じた。要点は以下の4点である。
- 事象の主体が主格でマークされ、非対格動詞も生起し得る新たな「テモラウ」の構文形式(=「主格型」の「テモラウ」構文)が存在する。
- 「テモラウ」構文が「主格型」として実現できるのは、「テモラウ+α」全体が未実現の事象の成立/不成立を希求する話し手の心的態度を表す構文として機能しており、「テモラウ」の授受性が希薄化しているためである。
- 「主格型」の「テモラウ」構文は、格構造の変容の結果、「テクレル」構文に類似した統語構造、意味内容を持つに至っている。
- 「主格型」の「テモラウ」構文は、話し手が事象の行為に直接的に「関与」する場合には成立しにくい。この条件は、「主格型」の「テモラウ」構文の概念構造に起因する。