「可能」の意味構造 ―「使役型」と「自発型」―
山口 和彦 (札幌医科大学)
これまで機能的類型論や認知言語学においては、使役や受身などの意味・認知構造が詳細に分析されてきた。しかし、英語等の言語では、可能はモダリティの一部として分析され、また、日本語では可能はボイスに属するものとして捉えられている。その結果として、文法カテゴリーや構造を離れた「可能」の統一的な意味構造が考えられていないのが現状である。
そこで、本発表では「可能」の意味構造を提案した。つまり、「可能」には「enablerがenableeにある種のforce (→1)を加え、そのenablerがプロセスを引き起こし(→2)、そのプロセスを何らかの過程(→3)を経て実現させる」という「使役型可能」と、「enablerとenableeの関与とは関係なく、何らかの過程(→3)を経て結果状態が実現される」という「自発型可能」の最低二種類があると提案した。