Constraints and Functions of the There-construction
大川 裕也(大阪大学大学院)
英語のthere構文は、“There + V + NP + X”という形式が一般的であり、Vは非対格動詞、そしてNPは不定名詞句でなくてはならない。本発表では、これまで提示されてきたthere構文に関わる統語論的・意味論的制約の問題点を指摘し、機能的な観点からthere構文を観察する。主な主張点は以下の通りである。(i)能格動詞(openなど)がthere構文中に生起する可能性はNPによって決定される。これにより、典型的な能格動詞の意味(開く、など)が失われ、存在・出現の意味で解釈される。(ii)There構文は、話者(著者)の体験に基づく記述と共起しにくいことから、thereは事実(命題)を話者の体験領域から隔離する機能をもつ。それゆえ、there構文の機能は存在・出現の客観的な描写である。(iii)There構文の文法性・容認性は、統語的要因によって判断される面もあるが、文脈に大きく依存する。