音韻,語彙,統語処理に関する聴覚文理解の事象関連電位研究:
脳内指標と時系列を中心として
高祖 歩美(首都大学東京・院/学振)
萩原 裕子(首都大学東京/科学技術振興機構)
尾島 司郎(科学技術振興機構)
萩原 裕子(首都大学東京/科学技術振興機構)
尾島 司郎(科学技術振興機構)
これまで,音韻処理に関する神経生理学的データは少なく,その脳内指標が存在するのか,「文理解の神経認知モデル」 (Friederici, 2002)のどの段階で音韻情報は処理されるのかなど不明な点が多い。
本研究では,音韻処理にかかわる事象関連電位(ERP)成分を抽出し,音韻,統語,意味処理の相対的順序を明らかにすることを目的として,ERP実験を行った。その結果,意味的な誤りのある文ではN400とP600が出現し,統語的に逸脱した文では,P600が惹起された。音韻的な誤りのある文では,前頭の陰性成分およびP600と考えられる後期の陽性成分が認められたことより,音韻処理を反映したERP指標が存在することが明らかとなった。また,音韻的に逸脱した文で観察された陰性成分の開始潜時が,意味的に逸脱した文のそれよりも早いことから,音韻情報は少なくとも意味情報に先立って処理されることが示唆された。