数詞[1]を含む日本語の数量詞の用法について:
否定極性項目としての用法を中心に
坂本 智香 (神戸学院大学・非)
数詞[1]を含む数量詞Qは,否定極性項目として,(1)「NCQモVナイ」構文,(2)「QノNモVナイ」構文,(3)「NノQモVナイ」構文,(4)「NQVナイ」構文の4構文で用いられる。本研究では,これら4構文の用法について分析した。その結果,まず,(1)(2) と (3)(4) の間には,所与の言語形式の表す事態が文脈や外界の知識に基づいて想定された特定の事態であるか((1)(2))否か((3)(4))で違いのあることが明らかとなった。さらに,(1)と(2)では,(1) の想定が特定の事態の非実現までを含むのに対し,(2) はそうではないこと,また,(2) はQの表す数量が[1]であることが重要な意味を持っていることが明らかとなった。これらに対し,(3)と(4)では,共に文脈や外界の知識に基づいて想定された複数の事態の中の一つが表される点が共通しているが,(3) は実現が当然とみなされる事態を,(4) は,実現が例外的とみなされる事態を表している点が明らかとなった。