フランス語における他動詞型身体属性文の統語分析
小澤 卓哉 (北海道大学・院)
フランス語において他動詞 "avoir" をもちいて主語名詞句の身体属性をあらわす文の中には,「"avoir"+定冠詞+身体部分名詞句+関係節」の形式をとるものがあり,このタイプの文は身体属性をあらわす関係節部分を取り去ると非文法的になるという奇妙な特徴を示す。この特徴は,身体部分名詞句が関係節の内部で解釈されねばならないということ,すなわち再構成が義務的に起きるということを示しているものと捉えられる。したがって,関係節の統語派生という観点からは,問題となる関係節がいわゆるMatchingではなく,Head–raisingによって派生されると考えるべきである。
また,以上と同様のことが日本語の「青い目をしている」構文においても成り立つ。すなわち,関係節部分「青い」を取り除くと非文法的になることから,この構文の関係節もHead–raisingによって派生されると考えられるのである。