関係節構文に通言語的に見られる随伴現象に関する制約
稲田 俊一郎 (東京大学・院)
イタリア語及びフランス語の関係節では,関係代名詞を伴った随伴句が関係節の左端に移動する際に,関係代名詞にwh-pronoun (cui/qui) を用いる場合は随伴要素が前置詞のみに制限されるのに対し,complex pronoun (il-quale/lequel) を用いる場合にはそのような制限がない (Cinque 1982)。関係代名詞に d-pronoun (der) を用いるドイツ語の関係節を見てみると,ドイツ語ではそうした制限がないことが分かる。
本研究発表では,ゲルマン諸語及びロマンス諸語に通言語的に見られる上述の随伴移動に関する制約が,2種類の派生・構造を関係節構文に仮定する分析の帰結であることを論証する。関係代名詞の形態的特徴に呼応した,Head-raisingとMatchingの2種類の派生・構造を仮定することで,随伴句の大きさに係わる上述の制約は,関係節構文の派生における主要部繰り上げ移動に係わる移動の制約に還元できる。