チン語支テディム方言における相互・受動文の接頭辞KI-
大塚 行誠(東京大学・院)
チン語支テディム方言は,チベット・ビルマ語派に属し,ミャンマー連邦西部のチン州,およびインド東北部のミゾラム州で話される。ビルマ語系言語とチベット系言語の間を埋める特徴を示すが,その形態論・統語論についての研究はまだ初期的段階にある。
本発表では,テディム方言口語体における接頭辞KIについて論じる。テディム方言文章体を記述したHenderson (1965) は,動詞に接頭辞KIがつくと,英語の相互文もしくは受動文に相当すると記述した。
今回の調査で分かった事は接頭辞KIには,(1) 不定人称文,(2) 相互文,(3) 再帰文そして (4) 一人称複数包括形を動作主に持つ文を作るはたらきがあるという事である。更に,(1)は動作主を表示せず,(2)(3)(4)は動作主を絶対格で表示するという形態的・統語的特徴を持つ。