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日本語の目的語コントロール構文と目的語転位

船越 健志

日本語の目的語コントロール構文には,コントローラが対格で表示されるタイプ(「太郎が花子を東京へ行くように説得した」)と与格で表示されるタイプ(「太郎が花子に東京へ行くように命じた」)の2種類が存在する。本発表では,これら2種類のコントローラの統語的位置が異なることを指摘し,その違いが,コントロールの移動理論を前提として,以下の2つの仮説およびいくつかの理論的前提から導出できることを主張する:(i) 日本語において,構造格で表示された目的語は義務的に顕在的目的語転位の適用を受ける;(ii) 適切なθ役割を持っていれば,動詞はその補部の付加位置をθ表示できる。
また上記の2つの仮説からの帰結として,日本語のコントロール補文から長距離Aスクランブリングが可能であるという事実(cf. Nemoto 1993)を自然に説明できることも指摘する。

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