文脈的制約の再構築による前提の特定―助詞モと文脈依存的類義性―
首藤 佐智子
原田 康也
原田 康也
助詞モは,「長女が結婚し,次女も無事大学に合格した」のように,モ文の命題(F(x))とその対をなす呼応命題(G(y))の関係が,意味論的類義性ではなく,「文脈依存的類義性」(沼田1986等)による場合にも使用される。先行研究では,F(y)を呼応命題の条件とし,文脈依存的類義性によるモの使用は特殊なケースとして扱われてきたが,前提とすべきものを逸脱する使用を許容する説明は意味論的制約として一貫しない。本発表では文脈依存的類義性による使用を助詞モの基本形とするShudo (1998, 2002)の分析を踏まえ,文脈的制約の再構築によって前提を特定するアプローチを検討する。上記のような文脈依存的類義性による使用を許容しつつ,文脈上不適切な使用を排除する制約を再構築するうえで,Sperber & Wilson (1986)の「コンテクスト効果」の概念を制約に組み込むことが有効であることを示す。