日中英結果構文と非対格仮説―中国語結果構文を中心に―
崔 玉花
本発表では,日英語と異なり,表面上「直接目的語制約(DOR)」に反しながらも適格文となる中国語の「他哭累了(*He cried tired/*彼がクタクタに泣いた)」のような文を,非対格仮説の観点から考察する。
従来,「他哭累了」をDORの反例と見なさない立場では,この文に非対格文の構造を仮定し,中国語では非能格動詞に結果述語が付加されると,非対格動詞にシフトされるという分析がなされている。しかし,本発表では,V1が非対格動詞の場合の結果構文との比較を通じ,非能格動詞に結果述語が付加される場合も非能格動詞としての性質をもっており,日英語において非能格動詞に分類される動詞が,中国語では結果述語を伴うと非能格と非対格の性質を併せ持つことを,幾つかの非対格性のテストに基づいて示す。さらに,非能格動詞としての性質を持つ場合は,結果述語が目的語の位置にあるゼロ代名詞と叙述関係を結んでおり,DORの反例にならないことを主張する。