三宅島坪田方言の名詞アクセント
堀田 浩司
三宅島坪田(つぼた)方言はn拍名詞でn+2のアクセント型をもつ。アクセント核は昇り核であり,核は各拍と,最終拍の次の拍に来うる。すなわち,x拍目に核がある型を「(x)型」と表記すると,3拍名詞の場合は,(1)型,(2)型,(3)型,(4)型および無核型の5つの型がある。
最終拍の次の拍に核がある型(3拍名詞における(4)型)は後続する「仮想の助詞」に核があると解釈し,音韻表記では/…○[(▽)/ とする(○は名詞の拍,▽は助詞の拍)。名詞単独形は核を担う助詞が無いため,核の上昇が1拍前にずれ,最終拍で上昇が実現する。例えば(4)型の/コトバ[(▽)/(言葉)の単独形はコト[バである。また,格助詞は仮想の助詞の地位に立つが,副助詞は立たない。そのため,/コトバ[(▽)/に格助詞「ガ」を付けるとコトバ[ガとなる一方,副助詞「モ」を付けると核を担う助詞が無いため,単独形と同じく核の上昇が1拍前にずれてコト[バモとなる。