指示詞由来の間投詞「あの(ー)」・「その(ー)」について
―情報(話題)の「所有者」の観点から―
小川典子
本発表では,指示詞由来の間投詞「あの(ー)」「その(ー)」を扱い,その用法の違いが情報(話題)の「所有者」という観点から説明できることを示した。
a. それは,{あのー/そのー},違うと思う。
b. {あのー/??そのー},すみません。
間投詞「あの(ー)」「その(ー)」はどちらも「言いよどみ」である点で共通するが,「呼びかけ」の機能は前者にしかない。本研究では「言いよどみ」と「呼びかけ」を,それぞれ発語内行為と発語媒介行為という異なるレベルの行為として捉えるという視点を導入し,記述・分析を行った。
さらに,「あの(ー)」は「当該の話題について,話し手が優位に情報を持っている場合」,「その(ー)」は「当該の話題について,聞き手が優位に情報を持っているか,すでに話し手・聞き手双方に共有されていると話し手が見なす場合」に用いられるという仮説を立て,コーパス調査により,この仮説が支持されることを示した。