意味的再帰性条件("Condition R")再考
三浦 秀松
再帰構文の表す再帰性には,主語と目的語が表す参与者が一致する意味的再帰性と一致しない近似的再帰性がある。Lidz (2000, 2001)は,意味的再帰性は動詞の語彙レベルで再帰性(語彙的再帰性)がある場合にのみ保証され,そうでない場合は近似的再帰性の可能性が生じると指摘し,意味的再帰性と語彙的再帰性の間には双方向条件があるとしている("Condition R")。しかし,日本語では語彙的再帰性を持たないと思われる動詞でも意味的再帰性だけが解釈可能で近似的再帰性の解釈が困難な例が存在する。これは,語彙的再帰性は意味的再帰性を保証するが,その逆は必ずしも成り立たないことを示唆している。Lidzの唱える「意味的再帰性の条件("Condition R")」は,双方向条件から一方向条件へと弱められるべきであることを主張した。