トルコ語とウズベク語の疑問接語mI/miは文法的に異質か
吉村 大樹
トルコ語とウズベク語の疑問接語は類似した性質を有しているが,文中での生起可能な位置の範囲が互いに異なる。これらを説明する際に先行研究の成果をそのまま適用すると,トルコ語とウズベク語を統語的に全く対照的なものとして説明することになり,両者の類似性が反映されない。そこで本発表では,(i)miの有無が文法性に関与しない,(ii)どの疑問を表す形式が使われるかは発話時の文脈により決定される,(iii)疑問のスコープはmiの移動ではなく,音韻論的ストレスによって表示される,などの根拠から,トルコ語と同様にウズベク語のmiも統語的には直前の語である文の述語に統語的に依存していると説明する。この説明により,ウズベク語とトルコ語のmi/mI両者の機能・形式的側面の類似性が説明できる。また,形態論的説明を導入することで主語を表す接語代名詞と疑問接語との相対的位置の説明がより容易になり,さらにはmi/mIの他のWH詞との共通性も説明可能となる。