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連接名詞句の「擬似的」選言解釈

田中 大輝
林下 淳一

日本語の「AやB」などの表現(以下,連接名詞句)は,通常は『A, B, …のすべて』という連言(全称量化)の意味を表すが,条件節内にある場合には『A, B, …のいずれか』という選言(存在量化)の意味も表せる(例:「寝る前にコーヒーや紅茶を飲んだら眠れなくなる」)。本発表では,この選言解釈は連接名詞句が主節全体を作用域に取った場合に相当すると主張する。条件文は全称量化子が主節全体を作用域に取った場合と存在量化子が条件節だけを作用域に取った場合とが論理的に等価であるため,あたかも連接名詞句そのものが存在量化の意味を表すように見えていたのである。さらに,連接名詞句と量化詞の違いを観察することにより,連接名詞句の作用域は量化詞繰り上げのような統語的操作で決まるのではないことを示す。そして,連接名詞句以外の名詞句でも選言解釈が可能な例を挙げ,これらの観察を総合的に説明できる談話的制約を提示する。

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