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Empathy Conflict and Discourse

北爪 佐知子

久野 (1987) の「視点」と「共感度」という概念では明確に説明できない事象がある。この論文では,次のように談話法規則の観点からの仮説に基づく規則を提唱して,Bedell (1989) の反例も含め,これまで提起されてきた諸反例を説明できる事を示した。
「話者の意図に見られる視点の一貫性」
ある物,人あるいは出来事,状況などを指示,描写するには,それぞれの言語により基本形と認知される言語形式がある。この基本形を,話者の意図により変換する過程において共感度関係に矛盾がある場合,生成された文は不適格文となる。
又,「表層構造の視点ハイアラーキー(改訂)」は2つの則の規則として改正する。
「主語に関する視点ハイアラーキー」
二つ以上の NP から,話者の意図により主語を選択する場合,話者は目的語より主語よりの視点を取る。
「受動態変換の視点ハイアラーキー」
基本形から受動態に変換する場合,話者は by-agent の指示対象より主語よりの視点を取る。
「談話法規則違反のペナルティー」は不必要となる。
「対称詞変換の視点ハイアラーキー」
基本形から対称詞 f(x) へ変換する場合,対称詞 x と,x に依存する対称詞 f(x) に対する話者の共感度に,次の関係が成り立つ。
E(x) > E(f(x))
この規則により,「談話法規則違反のペナルティー」と言う複雑で不自然な規則を立てる必要がなくなり,能動態と受動態の共感度の違い,指示対象と共感度との関係,単独では不適格文となる文がparrot question などの文脈では適格文となる理由等が説明でき,「視点の一貫性」より自然で説明力の大きい総括的な規則である事が明示された。

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