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Argument/Nonargument It and θ-Theory

岩崎 康文

本発表では(1),(2)の主語 It を考察し,(1)の It は非項で指示機能を持たず θ' 位置を占めているのに対し,(2)の It は項であることを明らかにする。(2)の It に関して Radford (1988), Chomsky (1982), Williams (1980) などは非項であると述べているが,実際は指示機能を有し,D構造で θ 位置に生成されたのち θ' 位置に移動されているのである。
(1) a. It seems that John likes ice cream.
b. It appears that he has been ill.
(2) a. It is obvious that you're right.
b. It is clear that he is dishonest.
c. It is a problem that he is here.
(1),(2)の述語について主語の位置に that 節が生ずるかどうか,名詞句が生ずるかどうか,そして主語繰り上げ構文に用いられるかどうかを調べると(1)と(2)の述語には違いが見られる。(1)の述語の場合,that 節や名詞句は主語の位置に生じないが主語繰り上げは可能である。これらの事実は(1)の Itthat 節より指示を受けず,(移動を受けることなく)がの位置を占めていることを意味し,従って(1)の It は非項の It となる。
これに対し,(2)の述語の場合 that節や名詞句は主語の位置に生じるが,主語繰り上げ構文には用いられない。また Rigter & Beukema (1985) などに述べられているように be 動詞は主語繰り上げを許す動詞である。これらの事実は(2)の Itthat 節から指示を受け,D構造で &thata; 位置である obvious, clear, a problem の主語の位置に生成されてから θ' 位置である be 動詞の主語の位置に移動していることを意味し,従って(2)の It は項の It である。また (2)の that 節は(1)とは異なり,付加詞の位置に生成されて It と大連鎖を形成する。このことにより that 節は θ' 役割を受けるので θ 基準の違反は生じない。

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