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談話標識 anyway の機能

高原 脩

本発表では,談話内の境界や統括性の度合を示す機構の一つである談話標識 anyway が果たす役割と機能の特性について考察した。主に話し言葉で用いられ,「譲歩」と話題の「転換」に大別される anyway の機能を検討した結果,この標識は「直前の文との間に区切りをつける (dismissal)」という特性のほか,それが談話内で生起する位置や音調面の特性も共通していることが認められた。又,統括性の無い特徴を示す後者の下位機能である「中断」 (interruption) や「再開」 (resumption) がこの標識により統括性の度合にどのように影響するかについて検討した。吏に anyway の基本的機能は話題の「再開」よりは「区切り」である (Altenberg 1986) が,日常会話ではこの両方の機能があること (Bublitz 1988) やその用法を条件づける話題ではなく,会話の行為 (activities) を組立てることである (Owen 1985) という見解の妥当性についても論じた。
文脈の統括性と談話内での話し手,聞き手のかかわりを重視するという点で anyway は談話的であるばかりか又語用論的機能をも有しており,Sperber & Wilson (1986),Brockway (1981),Blakemore (1987,1989) 等による関連性 (Relevance) 理論に基づく話用論的解釈が anyway の特性の解明にも重要な基礎を与えることを観察した。他方,話し手の意図を介入させず,談話の構造的特性に基づき,clue word や POP marker という概念を用い分析した Reichman (1978, 1985) 等の理論も示唆的であるが,Reichman では POP 標識により元の話題へ回帰する場合と区切らず話し続け,同じ話題を再び導入する必要がある場合とが区別出来ないことや個人間の社会的伝達機能を除外している等の問題点が認められた。又欠落している社会的機能にも目を向け,構造面からだけでなく,語用論的分析と談話分析とのギャップを満たす統合的な方法により,この機能の一般化が必要であることを強調した。

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