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Spec - XP のカスケード

高橋 孝二

Chomsky (1988, 11月, 京都フォーラム) は,これまで INFL 内部の要素として繰り込まれていた AGR を投射カテゴリー AgrP として独立させ,Neg P と共に樹枝構造に位置づけた。この Pollock 路線のモデル化は,最大領域の Spec-CP から同時的に派生する Spec-IP,Spec-VP 他と共に,ゆるやかな相似過程の統語的展開として現われる Cascade(分かれ滝)と呼べる生成機構の究明を可能にする。一般に Spec-XP によって把えられる同時に異なったレベルにおける不変性は,カスケードによってつながれた階層構造をパラメータ化しつつ作り,その効果は著しく大きい。 Sportiche (1989) も独自に [XP NPXP-1] の変形回路を報告しているが,本発表は先行詞ターミナルに関連する 'Escape-Hatch' の相対化に向けて,I. Deployment, II. Locality Effects, III. Blockage の三部から組み立てられる。I. のカスケード展開は高度のフラクタル性を有し,例えば Spec-IP の Spec は Spec-NP を分出させ,[Agr INFL [Agr の付加構造も認められる。II. のカスケード効果の中で,INFL でのアマルガムと「モナド化」現象,Spec-PRO の可能性と Spec の代替 (VMH) ,ECM 効果としての Spec-Drop,更に CP 消去なしの Opacity 解除が Spec-head 呼応のパラダイムとして可能であることが示される。III. のカスケード阻止では,「γ フィルター」の有効性と,付加構造の有無とカスケード移勣との平行性が検討される。
文法の活性化を増幅しまた抑制もするこれらのカスケード機構は,痕跡理論と対を成す変形前の D- 構造プログラムであり,Anaphora の他に運び出す力を備えたモデルとしての "Epiphora" の概念化を要請している。 'Economy' とは単にコストを少くする方向に走るのではなく,'Trivial Chain' の自明性の解明にこそ求められるべきである。

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