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受動性主語を持つ文に現われるニの意味・用法

堀川 智也

ニには〈密着性〉〈方向性〉の両面があると仮定すると,「町ニ池がある」は〈密着性〉,「壁ニポスターを貼る」は〈方向性〉+〈密着性〉,「友達ニ会う」は〈方向性〉が現われた場合と考えられる。それでは,受動文「山田は佐藤ニなぐられた」におけるニは,このどちらの性質が現われたものだろうか。本発表では,これを,〈密着性〉のニではなく,〈方向性〉のニの延長線上にあると解釈できることを示した。
「YガXニ+動詞」において,「尽くす」類(背く・逆らう・味方するなど)は,〈方向性〉のニをとり,能動的な主語をもつことは明らかである。また,「驚く」類(悩む・苦しむ・感動するなど)や,「もらう」類(借りる・いただく・敦わるなど)は,形態的には,「~(ラ)レル」がつかないものの,意味的には,受動的な色合いを帯びている。そこで,主語Yの能動性―受動性という尺度で並べると,次のような図になる。(「気づく」は「尽くす」類と「驚く」類の中間にあると考えられる。)主語が受動的になるにつれて,現実世界の行為の方向は「Y→X」から「Y←X」へと移行する。しかし,言語表現上,主語寄りの視点を要求する文であることは一貫している。受動文においても,主語Yの側から見れば,動作主Xは「動作成立の担い手となった相手(Y→X)」ということになる。 このように解釈することによって,受動文におけるニは「尽くす順において相手を示すニ(方向性のニ)」の延長上にあるとみなすことができる。

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