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ロシア語の節構造のタイプと要素の取り出し可能性

匹田 剛

ロシア語には,概略,次の5つのタイプの節が存在すると考えられる; 1) 主語のある節(いわゆる狭い意味での節のこと),2) 形動詞節,3) 副動詞節,4) COMP ありの不定詞節,5) COMP 無しの不定詞節。これらの節はいわゆる「話題化移動」によって要素を取り出せるか否かに関して,それぞれのタイプがそれぞれの性質を示す。この問題を説明するためにComrie (1973) は以下のような規則を提案した。(筆者による若干の修正が加えてある)。
S-PRUNING: Embedded S and S' are deleted unless they immediately dominate VP and some other overt constituent.
しかし,この方法では形動詞節と副動詞節に関して問題が残る。そこで今回,Comrie (1973) が考慮にいれなかった形動詞節と副動調節を含めて,ロシア語の節からの要素の取り出し可能性を説明するための,もう一つの分析方法の提案を試みた。今回,考察したそれぞれの節の示す性質は以下の通り; 1) 要素が取り出せるか,2) 名詞句の照応関係に関して統率範疇としての振る舞いを見せるか,3) 時制を持っているか,4) VP 以外の overt な構成要素を持っているか。これらの点を考察すると,S-PRUNING は Comrie の提案したように VP 以外の overt な構成要素の有無のみによって引き起こされるのではなく,S-PRUNING を引き起こす条件となるのは,VP 以外の overt な構成要素の有無と時制の有無の両方であることが明らかになった。そしてさらには,この S-PRUNING が削除規則であることを考えると,いわゆる RECOVERABILITY CONDITION を前提とすれば,VP 以外の overt な構成要素の有無という条件は redundant なものであり,わざわざ別個に規定する必要がないことがわかり,結論として以下のような S-PRUNING の定式化が可能であることがわかる。
S-PRUNING: Embedded S and S' are deleted where that clause is untensed.

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