英語の主語節の外置と目的節の外置について
主語部の外置の出力は挿入節形成規則の入力となる:
(1) It is true that it rained.
(2) It rained, it is true.
しかし目的節の外置の場合は,その出力ではなく入力が挿入節形成規則の適用を受ける:
(3) I explained that [all the members, hated me] to John.
(4) All the members hated me, I explained to John.
(5) I explained it to John that all the members hated me.
(6) *All the members hated me, I explained it to John.
したがって,関与する三つの規則の適用順序は次である:
(7) 主語部の外置⇒挿入節形成⇒目的部の外置
外置された主語節からは疑問詞を取り出すことができる:
(8) What was it obvious that John had bought ?
しかし外置された目的節からは疑問詞を取り出すことができないようである:
(9) *Who did John admit it to you that she hated ?
この事実を Ross (1967) の提案した「外置された要素からは何も取り出せない」という一般化と照らし合わせると,次のように言える:
(10) 外置された主語節は外置された要素の一般的特徴を備えていないが,外置された目的節はそれを備えている。
所見 (7) と (10) は,主語節の外置構文が派生の早い段階で生成されること,および目的節の外置がそれより遅い段階の右方への移動であることを示している。Chomsky (1981, 1986) は主語節の外置構文を基底で生成する方法を提示しているが,この所見はそれを一部支持する。同時にこの所見は,目的部の外置が別扱いを要することをも示唆する。