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RELEVANCE 理論における「疑似条件文」と「暗黙の前提」

山崎 英一

暗黙の前提: この理論は命題形式での文脈仮定による富化 (enrichment) を認めるので if 発話の前件は実際の前件の仮定総てである必要はない。「暗黙の前提」が文脈仮定であるとすると,表現上の前件と共に本当の前件となる。それ故論理的諸特性が成立するのはこのレベルということになる。このためこれ以前のレベルでは非論理的なこともあり得る。
疑似条件文: (1) If you are hungry, there is a flan in the fridge. 従来説として (a) 遂行分析説: If you are hungry, (I say that) there is a flan in the fridge. (b) 「後件=隠れた理由節」説: If you are hungry, (because) there is a flan in the fridge, (you may have it). がある。直観的には両説共に自然だが GB 理論と整合的でない等種々の問題がある。
関連性理論の下では,両説と同様の効果が統語論に抵触せずに生じ,疑似条件文も命題形式のレベルでは通常の if 発話と同じ 'if p, then q' を有し,故に両発話は質的連いがないことを示しうる。まず,発話人力の示す仮定は視覚入力等の仮定と統合され命題態度を同定して (2) となり更に他の仮定との下結局 (3) となる。(2) If..., the speaker has said that there is a flan in the fridge. (a) There is a flan in the fridge. 関連性原理に合わないので推論が続く。聞き手の呼び出し可能な知識に (4) が在るとこれと (3) とから推意 (5) が導出される。(4) If there is something to eat, then, I can eat it. (5) I can eat it. 以上のことから (a) 説は (2) に基づき,(b) 説の because は発意と,関連性原理に合わないため推論を続行せざるをえないことから生じ,「隠れた結論」は推意であり後件自体にこの種の能力があるのではないといえる。以上,関連性理論では疑似条件文の後件を後件のままで分析できる。

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