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ロシア語における具格構文の意味構造
―再帰性と完了性―

米重 文樹

ロシア語において具格が動詞と用いられる構文には様々な下位タイプがあるが,全体として次のような共通の構造が認められる。すなわち,具格構文においてはまず,具格対象以外の動作対象が動作主によって標的 (target) として置かれる。次に,それに応じて動作の選択がなされると同時に,その動作を通して結果的に標的に「付与・作用」すべきものとしての対象(具格で実現される)が「外的状況・条件」に応じて動作主によって用意される。

  1. On brosil palkoj (具)v sobaky.
  2. >On brosil palku (対)v sobaky.
a. は,「犬(標的)めがけて棒切れを投げた(例えば,追っ払うために)」という点と,「(異格で実現される)棒切れが彼の手元に既に用意されている」(「道端の棒切れを拾って」という前段階は既成のものとして既に合まれている)という点において b. と異なる(b. は「棒切れを(拾って)投げた,そしたら犬に当たった」の意味の無願文である)。
このように異格対象は動作主自身(一方の極)から発し,動作主自身によって設定された対象標的(他方の極)に付与されるという意味で「再帰的」であり,また,その直接的作用・効果は当該動作を通して「自動的に」付与されるという意味で「完了アスペクト的」である(cf. ロシア語完了アスペクトの「内的限界の達成」)。
標的として置かれるのが動作主自身の場合には(標的=動作主),異格対象は動作主の「領有・保有・具有」対象となる(On upravljaet stranoj 「彼は国を支配する」,On vernulsja vračom 「彼は医者として帰ってきた」,dyšat' svežim vozduxom 「新鮮な空気を呼吸する(再帰的往復運動)」)。

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