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シンハラ語の受身文について

Dileep Chandralal

シンハラ語はスリランカの公用語であり,それを母語とする話者はおよそ1154万人である。
本発表では,シンハラ語の受身文の形態的,統語的特徴とそれの意味的・文体的役割を明らかにしようと試みる。そこで見逃してはならない一つの点は,現代シンハラ語に口語体と文語体という明確な結語的相違をもたせる Functional diglossia があるということである。
シンハラ語の間接受身文の場合,元の目的語が主語の地位に昇格されることはありえない。したがって,名詞句を主語の地位に昇格するのは,シンハラ語の受身文の義務的要素ではないということを指摘する。しかし,これは日本語の間接受身文のような意味上のはたらきをもたないので,semantic indirect passive ではなく,syntactic indirect passive と呼ぶことにする。
普通の受身文から無意志的受身文が区別されるかということは複雑な問題である。再帰的受身文の主な役割は動作を自然のプロセスとして表わすことである。そこでは,無生物の名詞が主語になって,能動態の動詞をとるのはシンハラ語において非常に珍しいことであり,この構文はシンハラ語の一つの特徴として示す。
シンハラ語の能動態・受動態の対立は,意味論的に分類すれば,「Do/Cause」(‘する’)・「Happen/Become」(‘なる’)の二分法である。 シンハラ語はその内の「Happen」 ‘なる’型の動詞をよく使う傾向がある。特に,notional passive はいつも受身文によって表われる。この意味で,シンハラ語は出来事志向の言語と言える。
そして,シンハラ語では,この「なる」型の表現に対応する動詞を発達させて受身動詞にしているのではないだろうか。

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