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投影のミメシス

高橋 孝二

句構造の非文法項カテゴリーの間隔化による二分割を通して,Move-α を Adjoin-α の中継によって進行させる「セグメント付加変形」が Barrier 理論の概念規定に登場したが,この分節点に重みをかけることによって二つの極を移動する「表層ミメシス構造」の系列が見えてくる。投影の内心構造がつねにレベルの同一性を維持するものではなく,異質のカテゴリーの混在によっても成立する可能性は,すでに Freidin (1983) の "Composition/Companion" 原則と,Pesetsky (1982, 1985) の "Conflation" という視点から方向づけられていた。カテゴリーの変更を伴わない通常の [γ α [γ 分節化に加えて,カテゴリーの擬態によって句構造の周縁を裂開させる「ミメシス投影」は,第一に [γ e [γ の割れ目を作り,第二にこの浮き出た空白部に投影の代替要素を押し込む。この理論化の中に Abney (1986) の IP → DP 対応が [IP D [IP の仮象性として問い直され,Vergnaud (1987) の AGR と [SPEC/VP] との同定による AGR → VP 対応のシステム性も把え直される。更にまた,Reuland 他 (1987) の二系統投影の同時発現や,空の主要部による統一の示唆は,原カテゴリーを持たず空虚な成分が隔たりを可変ドメインとして産み出す [e e [e の再表象に注目させる。 これらの X カテゴリーが Y カテゴリーのようにふるまうという複製としての「as if 性」は構造の意味化に貢献する。単一性を変質させつつ多数化する「ミメシス変形」をひとつの均質な系列に統合し得る道は,上の Y が指標系に属するカテゴリー間を巡回する相面全体を考察することに求められる。対立項を分解しつつ分節し接合する [γ e [γ の入口の標識は Spec であり,擬態する成分はこの内的な襞に oblique に挿入される。 CSR (θ)= NP はかくして MSR (θ) = SP のセットを保有することが明らかとなり,VP 全体を IP に付加する二重分節の存在様態も自然に理解される。

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