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談話行動における発話と理解
―実験音声学的アプローチ―

杉藤 美代子

  1. 目 的
    談話における発話の実態とこれを聞いて理解する過程の解明は,今日,重要な課題の一つとなっている。ここでは,4名の大阪方言話者の自然な談話の録音,録画資料を材料として,各話者による発話の音響的特徴と,これを聴取する聞き手の反応と理解の過程について考察する。
  2. 方 法
    談話音声を文字化して,その文法的特徴を確かめ,一方,スペクトログラフ及び,マイクロコンピューターにより音声の音響的特徴を分析して,発話と休止の時間関係,他者の割り込みによる声の重なり時間を調べ,イントネーシヨンの検討を行った。
    また,休止時間や無駄な部分をすべて削除した音声,その他につき聴取実験を行って,休止時間の有無と理解との関係等を調べた。
  3. 結 果
    (1) 発話と休止の時間関係は,ここで扱う主な話者の場合平均約77:23であり,すでに測定したアナウンサーによるニュースの場合とほぼ一致することが明かとなった。発話句,発話段落の末尾では声下げが多く,後者ではその上発話速度が遅くなるのが観察された。
    (2) 末尾の基本周波数が下降する場合に,聞き手(話者の視線が向く)の応答が入る傾向がある。また,話の盛り上がるときに他者の割り込みが多くなり,話者交代,話題の変更もここで生じやすい。
    (3) 発話には文法的な不備が多いが,聞き手はこれを補って内容を記憶する傾向がある。この時,休止時間が,聞き手の理解を助けることが明かになった。これは話者にとって生理的現象である休止時間が聞き手にとっては短期記憶の入力時間として働くことを示唆している。
以上,談話における話しことばの特つ韻律的特徴を明かにするとともに,この特徴と聞き手の記憶のしくみとがあいまって,書きことばと異なる話しことばの文法的な不備を捕うことを明かにした。

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