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東京方言におけるガ行音の変化と変異

日比谷 潤子

筆者は,現代東京方言の変化と変異の実態をとらえ,特に音変化のメカニズムを明らかにするため,フィールドワークを行なっている。本発表では,これまでに集めたデータを分析し,知見の一部を報告する。
Labov (1966) 以来,録音データを用いて,言語の変化・変異状況を解明する研究が世界各地で行なわれている。一方日本では,新しい言語表現の伝播過程を究明しようとする試みがすすめられている(井上・荻野 1984, 1985)。本研究では,Labov の枠組にしたがってえられたデータを分析し,新しい音声現象が広がっていく過程をみたい。
今回報告するのは,その中で,文京区根津一,二丁目を対象に行なったガ行音調査の結果で,住民票からランダムに抽出したインフォーマントのうち,生え抜き35人,(10代-9人,20代-4人,30代-7人,40代-7人,50代-5人,60代-3人),それにグループ・ディスカッション法を用いて録音した50代の生え抜き2人について検討した。
東京方言における語中のガ行音の [-ŋ-] から [-g-] への変化は,既に報告されているが(金田一 1967,井上他 1983),このような先行研究は,いずれも単語リストの読み上げ調査に基いている。本研究では,単語リストの他に文章朗読,インタビューの枠内での自由会話,道きき(インタビュー外)の計四つのスタイルを設定したところ,この順で [-g-] 出現率が高かった。
次に年齢別にみると,(みせかけの時間における変化)10代,20代で [-g-] 出現率が最も高く,年齢が高くなるにつれて減少していく。
第三に,50代のインフォーマントについて,ランダムサンプリング法とグループディスカッション法でえられたデータを比べると,後者では [-g-] 出現率が最も低い。

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