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日本語の論理形式と文法の条件

西垣内 泰介

May (1977),Huang (1982) に示されたアイディアに従って,日本語の WH 句は「論理形式」 (LF) への派生の過程で「オペレータ」の位置 (A'-position) への移動を受けると考えると,例文(1)のような,関係節(連体修飾節)の中に WH 句が現れる文の文法性は日本語の LF 派生に関わる移動規則は Subjacency 「下接の条件」の一つの効果である Complex NP Constraint 「複合名詞句の制約」に従わない,という見方に対する証拠である,と考えられてきた。
(1) ジョンは [[誰を批判している]本] を読みましたか?

本論では,まず,(1)の文法性は日本語の LF 派生が Complex NP Constraint に従っていないことを示す証拠になるとは言えない,ということを述べた。(1)の文の LF 表示は,WH 句「誰」が関係節を跳び越えて A' の位置へ移動するのではなく,「誰」自体は関係節の内部だけで移動し,この移動が引き金になって,それを含む複合名詞句全体が A' の位置へ移動されることにより,派生される,と考える。この線に洽った(1)の LF 表示は,(2)のようなものである。

この分析が正しいとすると,(1)の文の LF 派生には,2つの移動が関わっており,その何れも,Subjacency の違反は含んでいないことになる。 この分析を支持する証拠の一つとして,WH 疑問文に対する「だ/です」で終わる短い答えに基づく議論を提出した。更に,(2)のような LF 表示の基盤となる理論的メカニズムを示し,この線に沿った分析に課せられる制約を論じた。

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