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象形文字ルウィー語の api の機能について

大城 光正

従来,象形文字ルウィー語 api は場所や時の副詞(ヒッタイト語 apii̯a,リュキア語 ebi,ebei との関係),又は指示代名詞 apa- の中性・単・主―対格形として指摘されてきた。しかし文脈上の解釈から,同語はヒッタイト語の場所に関与する副詞(動詞前綴)appa “再び,後に”との対応が示唆される。このことはヒッタイト語と象形文字ルウィー語のこの範疇に属する語群を比較することによって,より一層明白になってくる。
ヒッタイト語の場所に関与する副詞には,-a 語尾形と -n 語尾形(šer を除く)が存在し,象形文字ルウィー語も同様の体系を保持していた可能性が考えられる。但し,ヒッタイト語 appa : appan に対して,象形文字ルウィー語では á-pa-na (*apan) は存在するが,ヒッタイト語 appa に対応する語形は確証されていなかった(Iskenderun 碑文の ("POST") á-pa- は不確実)。象形文字ルウィー語 api とヒッタイト語 appa の対応の指摘によって,象形文字ルウィー語の副詞の整然とした体系の存在が明らかになった。

ヒッタイト語象形文字ルウィー語
andaandanà-ta (*anta)à-ta-na (*antan)
appaappan[*á-pi]á-pa-na (*apan)
kattakattanINFRA-ta (*kata)SUB-na-na (*anan)
parāpiranpa+ra/i-i (*pari)pa+ra/i-na (*paran)
šarašerSUPER+RA/I (*sara)SUPER+RA/I-ta (*saranta)

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