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A Three-Level Approach to Typology
―他動詞構文をめぐる言語事象に対する説明原理―

山本 秀樹

本発表では,Typology における言語普遍・多様性の説明原理として,従来,種々のレベルや概念の混同・誤用から生じた不自然な説明に対し,下記の三つのレベルを設定することを提唱する。そして,様々な言語事象に対して,それぞれ,どのレベルのどの概念が重要な役割を果たしているのかを見極め,三つのレベルの複層的な作用として言語事象をとらえていくことによって,理論上の矛盾を防ぎ,より自然な説明に達し得ることを示す。
(i) a level of the grammatieal strueture (文法構造のレベル)
・主語・直接目的語・間接目的語・斜格語。
・SV0,VSO 等の文法化された基本語順,他。
(ii) a level of the functional structure (機能構造のレベル)
新情報,旧情報,Topic,Focus,他。
(iii) a level of cognition (認知のレベル)
Attention Flow, Processing Difficulty, Viewpoint〔能格構文=VPt (terminal viewpoint), Antipassive=VPi (initial viewpoint),対格構文=VPi,受動文=VPt〕,他。
まず,一言で語順,省略と言っても,上の三つのレベルをそれぞれ反映した現象が存在し,各言語,各事象に対してどれが重要な役割を果たしているかを見極めていくことが,自然な Typology の説明にとって重要である。
次に,典型的に・・・・受身文が有する役割を,機能レベル(1. Patient が文頭に移って話題化,2. Agent が文尾に移って焦点化)と,認知レベル(VPt となることにより,3. Patient が figure となって unmarked case をとり,動詞の一致を支配,4. Agent が ground となって marked case をとりしばしば表現されず,動詞の一致を支配しない。)に分けてとらえることにする。これにより,能格構文 (VPt) を主とする言語における Passive (VPt)の存在(比較的的まれ)は認知レベルでの役割にはかかわらず,少なくとも機能レベルでの役割を巣たすものととらえられる。同様に,受動文と転換能動文との関係,能動文と同一の語順の受動文に関する事象も説明され,また,こうしたレベルの構造の違いが,しばしばそれぞれの構文の意味的ニュアンスの差にも反映していることも説明される。

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