X 規約と日英語助動詞の階層性
澤田 治美
本発表では,日英語助動詞が,いずれも X 理論 ((Chomsky (1970), Jackendoff (1977)) の枠組みで,階層的に分析できるということを論証した。
たとえば,次の日英語を比較してみよう。
(1) He would have read the book.
(2) 彼はその本を読ん だ だろう。
ここで重要なことは,(i) なぜ英語(SVO 語順)では助動詞は本動詞の前に現われるのか。(ii) なぜ,would > have といった助動詞の相互連結順序があるのか。(iii) なぜ日本語(SOV 語順)では助動詞は本動詞の後に現われるのか。(iv) なぜ,だ > だろうといった助動詞の相互連結順序があるのか。
上記の (i) ~ (iv) のような問いに対し,次のような X 理論の原理を用いて説明した。すなわち,本動詞を Head とすると,英語では Specifiers は Head より前に,日本語では後に現われる。これが (i) への解である。次に Specifiers の語順とは,階層が上位のものほど Head から遠ざかる。すなわち,英語では上位のものほど Main V より前(=左)に現われ,日本語では上位のものほど後(=右)に現われる。
以上のような視点に立ち,英語に対しては (3),日本語に対しては (4) のような X 理論的構造を提案し,具体的証拠を挙げて論証した。