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定・不定表現と記憶階層モデル

風斗 博之

定表現・不定表現にはいくつもの用法があり、多くの場合日本語と英語では表現法が異なる。機械翻訳システムの構築といった実用的な目的を考えても,それぞれの用法がどのような談話的・文脈的条件に基づくのかを定式化して明示することが重要となる。たとえば定表現では Donnellan の言う attributive use では対応する日本語の名詞句に指示詞がつかないのが普通てあり,又日本語の定表現の referential use では英語には対応するものがないソノ/アノの使い分けもある。 これらの区別は Discourse 内の同定と Discourse 外での同定,及び mutual knowledge の概念を用いて条件づけることができる。
これらの同定,mutual knowledge の概念を取り込んだ記憶階層モデルを考えることによって,定・不定表現の各用法を定式化することが可能となる。記憶階層モデルは,主に3つの記憶領域,Sentence Memory・Discourse Memory・Long Term Memory から成っており,Discourse Memory は会話等の始まる前の空の状態から,Sentence Memory や LTM からの入力及び推論を経て情報星を増やしていく。定・不定表現の各用法はこの Discourse Memory を中心とした処理に対応づけることができる。

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