満洲語文語の internal-head relative clause について
久保 智之
満洲語文語の unmarked な関係節は,「SOV 言語」に予想される通り,syntactic かつ semantic な head に前置される。満洲語文語には,このような prenominal RC に加えて,構文的には補文と同じであるが,機能的には,その補文中のある名詞句を semantic head とするような閉係節(intemal-head RC)がある。その構文は,(1) のようなものである。
(1) [NP1 [S. . . [NP2]. . .]]
NP2 は semantic head ではあるが,syntactic head ではない。
(2) | [dung | dzotere | gisun | inu | seme | |
董 | 卓(は) | その | 言(は) | 是だ | と | |
niyalma | jafara | sunja | niyalma | takūrafi | ||
人(を) | 捕える | 5 | 人(を) | 遣って | ||
ts'oots'oo | be | ganabuha-ngge] | amasi | jifi | ||
曹操 | を | 連れに行かせたの(が) | 戻り | 来て | ||
alame, | (『三国志』巻1,121丁裏) | |||||
告げるには |
(2) では,-ngge 節 (RC) 中の目的語,niyalma jafara sunja niyalma が semantic head であり,-ngge 節全体はこの名詞句を refer している。この名詞句は主文の述語 amasi jifi alame の主語である。
internal - head RC のタイプは三つしかない。(2) では head が関係節中の目的語であり,主文中の主語であった。 これを o-S と表わすと,残りの二つのタイプは,s- Sと s-O である。s-S の例を示しておく。
(3) | [ts'oots'oo | ekšeme | jidere- | ngge], | |||
曹操(が) | 急ぎ | 行く | の(と) | ||||
[dung | ceng | leose | ci | tucifi | genere- | ngge], | |
董 承(が) | 楼から | 出て | 行く | の(が) | |||
gung | ni | dukai | jakade | acaha; | (『三国志』巻4,154丁表) | ||
宮 | の | 門の | ところで | 出会った |