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英語の Locative Inversion Construction について

田路 敏彦

本発表では (1) に示される,Locative Inversion Construction (LIC) を考察の対象とし,その本質を解明する。
(1) Into the room walked John.
従来の LIC の分析には,Emonds に代表されるものと,Stowell に代表されるものがある。前者は前置詞句 (PP) を COMP へ挿入し,主語を後置する。後者は主語を後置し,それによって空になった位置に PP を挿入する。しかし,前者では主語の位置の trace が Empty Category Principle 違反になり,後者では主語の位置の PP が,必ずしも主語としての振舞を示さないというように,共に致命的な欠陥を抱えている。
そこでまず,Emonds に従い,英語には COMP substitution rule である PP Preposing が存在すると仮定する。ここで LIC において前置されている PP には制限があるという事実に注目せねばならない。
(2) *Out in the garden relaxed my friend John.
(1),(2) の比較から明らかなように,動詞に下位範疇化される PP,つまり動詞から θ-role を付与されねぱならない PP のときに LIC が現れる。
更に英語には,affix-hopping の mirror image rule として Verb Raising (VR) が存在すると考え,optional marked rule とみなす。そして VR が動詞を INFL の位置へ挿入し,それによって verbal trace (V-trace) が残される。ここで V-trace の性質として,次の仮説を提出する。
(3) the V-traee Property (VTP)
V-trace は proper governor となり得るが,Case や θ-role assigner とはなり得ない。
VTP によって,PP-trace に θ-role が付与でぎないので,θ-criterion 違反を回避するため,Move INFL によって,INFL に支配されている動詞が COMP へ移動し,そこで PP との間で government relation が復活し,θ-role が付与されるのである。
以上,LIC は PP Preposing, VR 及び Move INFL の規則群と,VTP の相互作用によって生成される構文であることが,明らかになった。

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