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Lexico-semantic Transfer と Prototype Condition

阿部 一

ここでいう transfer とは学習者の母国語知識が外国語学習に影響することを指し,その効果は正か負である。後者は従来,干渉と呼ばれてきたものである。Taylor (1975) は学習レベルと transfer の関係に注目し,学習レベルが上がるにつれその影響は弱まり,逆に普遍的な認知ストラテジーである過剰般化か目立つ点を指摘した。この意義は transfer に条件づけをした点にある。
阿部・田中 (1984) はそれを受けて,意味の習得領域の場合 transfer は重要な現象であり,学習レベルに応じて量的に誤りの数は減少するが,学習が進んでも transfer に起因するエラーの割合は意味領域に関する限りはあまり減少しないという semantic transfer hypothesis (STH) を提案した。
意味領域の transfer 現象をさらに研究するためには,各学習レベルでその発達過程がどのように行われているのか,特にその質的変化に注目すべきである。そのために Rosch (1973) のいう prototype の考えを導入し,質的変化に条件づけをすることによって問題点を浮かび上がらせると同時に,その体系化を試みることが必要であると思われる。
そこで検証のため,日本人学習者が英語の基本動詞 Have をどのように習得しているかを英米人の norm と比較検討してみた。その結果,prototype condition によって学習の初期段階では,Have (X, Y) を理解するのに学習者は非分析的に捉えがちであるが,学習の進行に伴ない分析的になる傾向を示すこと。また,既存の知識体系に同化可能な exemplar (Carey, 1983) と応化を必要とする exemplar が与えられた場合,前者を先に prototype とする傾向が明らかになった。
これは STH をより強力なものにするためにはある種の制約が必要であり,prototype condition がそのひとつと考えられる。

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