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ロシア語における動詞と不定詞の結びつきについて

北上 光志

従来なされてきたロシア語動詞と不定詞の結びつきについての研究はほとんどが意味の観点から述べただけであり,形に現われた基準を示していない(例えば,ソ連アカデミー文法 1970,1980 11)。
本発表は具体的に形に現われた基準を新たに提案し,この問題を考察するものである。
提案したのは次の2基準である。

  1. 動詞と不定詞の語順倒置
  2. 動詞と不定詞の間への他の語の割込み

これらが多く起これば動詞と不定詞の結びつきは弱く,そうでなければ強いと規定する。
そして,このことを用いて以下の2点で動詞と不定詞の結びつきを調べた。
1) 肯定文と否定文の対立
2) 不定詞のアスペクト(不完了体と完了体)の対立尚,今回は動詞 moč (できる),hotet' (欲する)と不定詞の結びつきを取上げた。(ソ連アカデミー文法は,この両者の結びつぎは同じであると規定している)結果は次の通りである。

動詞 (moč', hotet' と不定詞の結びつぎの強さ(強>弱)
基準 不定詞の体
moč' 語順倒置 肯定文>否定文 完了体>不完了体
hotet'
moč 割込み 肯定文<否定文 完了体=不完了体
hotet' 肯定文>否定文* 完了体<不完了体

*不定詞が不完了体の場合は差は無い。
このことより次のことが分る。
1) 動詞と不定詞の結びつきの強さには,i) 肯定文と否定文の対立,ii) 不定詞の体の対立,iii) 動詞の意味の違いが関係している。
2) 1) の関係の仕方は,基準を語順倒置にするか,割込みにするかによって違っている。
従来の研究は結びつかを考える際に moč' と hotet' を同様に扱った。しかし,この両者の結びつきの強さには上述のようなバリエーションがある。このことは,動詞と不定詞の結びつきを論じるのに,意味の観点からだけでは決め手が無いので,形に現われた基準を用いなければならないことを示している。

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