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基語命令表現からみたインドネシア語の一項・二項述語文

吉村 近男

接辞を多用する文法体系中での位置が不明確であった基語(共時的最小形式)命令表現 (e. g. Baca! = Read!) を交替形式のある二項述語文 (Type X, Ya. & Yb.) との関係を中心に論じ,〔I〕その位置付け,〔II〕態の問題への関連,を考察する。尚,基語命令表現はその形態・機能上明らかに「能動的」である。
Type X (A + meN - P + O; A = any pronouns or nominals)
(Orang itu) // membaca (buku). = The man reads a book.
Type Y
a. (O + A + P; A = 1st or 2nd person pronouns)
(Buku itu) // kau baca. = The book is read by you.
b. (O + di - P + (oleh) A; A = 3rd person pronouns or nominals)
(Buku itu) // dibaca ((oleh) orang itu). = The book is read by the man.
〔I〕二項述語基語命令表現を Dardjowidjojo (1978) は Type X より,Cartier (1979) は Type Ya. より導いている。両者とも根拠を示していない。そこで6つの独自の証拠を述べ後者の立場を採用すべきことを論じた。証拠は次の通りである。 i. Enclitic Pronouns の分布,ii. 直接的肯定命令文としての用法,iii. A 導入の前置詞 oleh の特性 iv. 二人称代名詞 (A) の Deletion に伴う形態・意味上の問題点,v. 命令文とは Speech Act 的に裏腹の機能を特つ一人称代名詞 (A) を伴う Type Ya. の用法,vi. 直接話法の伝達部における基語と Type Y との競合関係。
又,ここでの分析結果は意味的にも支持され,native speakers の直観にも合致し,形態的には最も simple であることが注目される。
〔II〕一項・二項述語文について重要な統語・意味特性に限ってその分布を次に示した。

Type X と Y は派生関係にはなく,頻度・機能上拮抗し,接辞等の形態的相違を越えて Philippine Type の Focus System と同質の様相 (cf. Schachter 1976) が認められる。

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