バスク語アスペイティア方言の繋辞的要素
吉田 浩美(東京大大学院)
「A は B である」(A, B は共に絶対格 NP)を表すとき,「絶対格+能格に呼応する繋辞的要素」が用いられることがある.このとき,能格で表されるものは通常「人」であり,絶対格で表されるものは「限定の度合が非常に高く,能格で表されるものにとって深く密接な関係にあり,かつ不都合ではない存在であるもの」に限られる.即ち「絶対格+能格に呼応する繋辞的要素」は,『二つの絶対格 NP の間に,能格で表される人にとって不都合ではない,ある統一的な内容が成立するとき,この三つの要素を繁ぐもの』と言える.また,聞き手に対して人を紹介したり何かを提供したりする場合にこの構造が用いられる時,絶対格にたつ語句に共起制限は特に無い.この場合この繋辞的要素は「A が B であることをあなたに対して述べている」ことを表すと同時に,絶対格で表されるものと「聞き手」との間にその発話の場面において一時的に「密接な」関係を作るものであると考えられる.