満州語文語会話書における反語表現について
山崎 雅人(大阪市立大)
満州語文語には,疑問詞や -o を付加した疑問形による反語表現がある.本発表では,発話中に話し手が有する含意に着目し,会話文体の tanggû meyenや『満漢字清文啓蒙』「兼漢満州套話」等の用例により,反語表現の機能的特徴について論じた.
○ absi 語す内容を非難すべきこととして反語化する ○ adarame 聞き手との共通理解を前提とし反語化する内容を成立させる手段を問う ○ ai 反語化する内容として広い対象を取るが特定化も可能 ○ aibi 前に示した命題の結果を反語化する ○ ainaha (連体形)反語化する内容をもたらす先行要因を問う ○ ainahai (連用形)同左 ○ aiseme 何を言うのかと問うことで反語化する ○ mujanggo ある前提から導かれる話し手の強い推測 ○ sembio 極論を提示し事実と離れた弱い非難 ○ semeo 事実をふまえた強い非難 ○ wakao 否定疑問による主観的な反語化 但し,修辞的意味の連続性から共通する面もあり,交換可能な場合も考えられる.