On the Writing Rule of Chinese Characters for the Mongolian Dative-Locative Suffixes in «Yüan-ch'ao pi-shi» and «Hua-i i-yü»
The five Chinese characters 突, 途, 圖, 禿, and 都 are used for the transcription of "tu" and "du" of Mongolian dative-locative suffixes -tur, -turiyan, -dur, -duriyan in "Yüan-ch'ao pi-shi (hereafter SH)" and "Hua-i i-yü (hereafter HIIY) ". According to Murayama (1961), there existed two principles upon which these characters should be written. In HIIY and the volumes 1-2 of SH, 突児, 途児, and 圖児 are added (1) to verbal nouns, (2) to words expressing human beings, human groups, and animals, and (3) to other words, respectively. On the other hand, in the volumes 3-12 of SH, 突舌児 and 都舌児 are added to stems ending in vowels, diphthongs and consonants n, ng, l, and m, whereas 途舌児 and 圖舌児 are added to stems ending in consonants γ, b, s, d, g, and r.
In this article, the author points out the fact that 突児, 途児, and 圖児 are used respectively with Chinese translations "時分・時 (at the time of ~)" "行
日本語の NVn 型の複合名詞-その形成と主語/題目-
「肩叩き」や「人助け」のような複合名詞について考える.このタイプの複合名詞の形成には,第一姉妹の原理が深く関わっていると言われてきた.しかし,「神隠し」や「虫食い」などの事例はこの原理では説明できない.本論では,このタイプの複合名詞の形成は,それが現れる文/談話との関連で考察する必要があることが議論される.複合化される要素は,文/談話的情報から復元できないからである.逆に,「文/談話」の「主語/題目」と同一指示のものは複合化する必要がない.これを基にして「基本構造」という概念を提案する.
基本構造:
Topic [(N) (N) N V] V
(Ni) (Ni)
(N:複合化される名詞,i:同一指示)
これに「同一名詞の反復を避ける原則」が適用され,名付け機能に応じて語彙化されるというのが本論の枠組みである.
「かきまぜ」と LF の再構成
本論文は日本語で「かきまぜ」を受けた名詞句が LF での再構成 reconstruction により文中のさまざまな位置で解釈を受ける可能性があることを主張する.まず,移動を受けた名詞句は D 構造位置だけでなく CP や vP の「端」 (edge) で再構成を受けることを示す.この主張の基盤となるのは束縛とスコープに関わる事実である.次に,LF での再構成は束縛理論の制約を受けることを示す.再構成はさまざまな位置で名詞句を解釈することを許すが,その可能性の範囲は束縛条件 A と C によって狭められるのである.さらに,LF 再構成は指示の非透明性を引き出す動詞など,スコープに関与する要素と相互関係を持つが,このような関係も束縛条件によって制約される.
A Study of the Tangut Rhyme Dictionary
"文海寶韻 Wen-hai bao-yun"
This volume is the first in-depth study of "文海寶韻 Wen-hai bao-yun" (manuscript), the unique Tangut rhyme dictionary, and contains a Tangut characters’ database supplied by the authors. The purpose of this review is to demonstrate the contributions the book makes to the development of the Tangut phonology, and also to point out some of the problems.
The major contributions of the present volume are the following:
(1) Prof. Shi Jin-bo has succeeded in establishing the relationship between two versions of "文海寶韻 Wen-hai bao-yun"(manuscript and xylograph). In conclusion, the manuscript was a simplified version of the xylograph.
(2) The data of 上声 shang-sheng Tangut characters, which have never been examined in detail, constitute the core of this volume.
(3) Prof. Shi Jin-bo has identified the 入声 ru-sheng Tangut characters. This contribution will have a great influence on the Tangut phonology.
As for (1), I basically agree with him, except for his demonstration on the date of editing the original version, about which I pointed out some problems. On the basis of (2), I have illustrated the correlation between the 平声 ping-sheng rhyme group No. 82 and the 上声 shang-sheng rhyme group No. 74. I have also added some details to (3). And I discuss the relationship between "文海寶韻 Wen-hai bao-yun", "文海寶韻雑類 Wen-hai bao-yun za-lei" and "音同 Yin-tong", which was not treated adequately in this book. Lastly, I have pointed out some problems in the database: word for word translation and phonetic transcription by Chinese characters.
Ping Li・Yasuhiro Shirai 2000 『語彙的アスペクトと文法的アスペクトの獲得』
Berlin; New York: Mouton de Gruyter
白井 純子 (中京大学/スタンフォード大学)
本書は,二人の優れた言語習得研究者が,アスペクトの習得について,第一言語獲得および第二言語習得研究領域における最先端の研究をまとめ,主として彼らの自身の研究を基に,プロトタイプ;コネクショニスト的な説明を試みたものである.発達論的および対照言語学的な観点からアスペクトの習得を考察し,どのようにして子どもがアスペクトの語彙的,文法的体系を構築していくか,言語によって習得の過程にどのような違いがあるか,アスペクトの習得における言語普遍的な性質と差異とがどのような心理学的,計算的なメカニズムで捉えることができるか,について述べている.英語,中国語,日本語を取り上げて,対照言語学的にアスペクトの習得を詳述してある点,コネクショニストモデルを実装しコーパスデータに基づいて検証している点が特徴的である.言語習得研究者のみならず時制やアスペクトに関心がある言語学者にとって必読の書である.
Jenkins, Lyle. Biolinguistics: Exploring the biology of language. Cambridge University Press, 2000, xiii+264pp.
本書はチョムスキーの生成文法理論の基本理念や近年の展開を,生物学諸分野との関わりを中心に描写した概説書である.生物言語学と呼ぶべき方法論は生成文法の独占するところでは決してないが,とりわけミニマリズムが言語設計の最適性を重要課題に据えて以来,人間言語に対する生物学的論考は今や生成文法を中心に言語科学の大きな潮流となりつつある.本書でも遺伝性言語失陥をめぐる旧来からの遺伝学との連携はもとより,形態発生学から進化論争までさまざまなレベルにおける生物学との生成文法の交流ぶりが活写されている.特に本書では言語進化の問題が大きく取り上げられており,「説明的妥当性を超える」ことを目指し始めた現在の生成理論の姿を理解する上で大いに有益であろう.言語の特性の根本的説明として近年示唆されることの多い対称性の破れや自己組織化の概念にもそつなく言及しており,生成文法が言語を含めた自然物に繰り返し現れる数学的パターンやそれを生む自然法則の研究としての側面を合わせ持つことをよく伝えている.一方で,対立陣営からのチョムスキー批判の多くが誤解と無知に基づく不当なものであると繰り返し指弾し,時に難解な専門用語も多用されるため,初学者よりはむしろ,生成文法にすでに馴染みがありさらに視野を拡げたいと思う言語学徒,他の専門領域の視点から生成文法に関心を寄せる自然科学者などに薦められる一冊であろう.