日本語の「句の包摂」に関する一考察
今井 忍（大阪外国語大）
日本語には，「［父の墓］参り」，「［庭の草］むしり」のように複合語の内部に句が生起するように見える「句の包摂」という現象がある．本発表では，「名詞＋動詞連用形」型の複合語を対象に，複合語の意味の慣習性に着目し，慣習的意味と結びつきやすい修飾語だけが句の包摂を起こしうることを観察した．また，「～探し」，「～集め」，「～作り」のように，前項に様々な修飾語が生起しうるタイプの複合語は，意味の慣習化の頻度が低いことを見た．
また，ネットワークカテゴリーの発達に関する認知言語学的研究と句の包摂に関する通時的研究に基づいて，句の包摂がある特定の複合語後項とある特定の修飾語について起こりやすいこと，複合語前項の種類の多さと修飾語の種類の多さとの間に相関があることを予測し，後者は共時的データから裏付けが可能であることを示した．
